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2-5.  区分ワンルーム物件の収益価値とは!?

前ページで、区分ワンルーム物件の資産価値(担保価値)を図る方法として、積算法をご説明しました。

このページでは、資産価値(担保価値)の観点ではなく、収益性の観点から区分ワンルーム物件を図る方法として、収益還元法をご説明していきます。


収益還元法とは、「その物件がこれから稼ぐであろう期待収益から物件価値を評価する方法」で す。

専門的な話を始めるとかなり奥が深いのですが、不動産投資の実務では、ごくシンプルに活用されるケースが大半ですので、「学問として研究した い」「資格取得のためにしっかり学びたい」とかでなければ、大雑把に以下3種類の特徴を押さえておけば大丈夫です。

(1)直接還元法(表面利回り)

(2)直接還元法(実質利回り)

(3)DCF法


直接還元法とは、「一定期間(不動産投資の実務では1年間)に、対象物件から得られる収益を還元利回りで割り戻す方法」です。

そして、「収益=満室想定家賃」で単純計算した利回りを「表面利回り」、「収益=純収益(満室想定家賃から諸経費を引いた額)」で計算した利回りを「実質利 回り」とします。


DCF法(Discounted Cash Flow法)は、「保有期間中(不動産投資の実務では「売却想定時期」または「シミュレーション最終年 度」まで)に、対象不動産から得られる純 収益および売却時の想定価格(復帰価格といいます)を現在価格に割り戻し、両方を合計して収益価格を求める方法」です。

こう書くと逆に分かりづらいですが、ポイントは2つです。

・一定期間ではなく、保有期間中および売却想定時の全期間を評価期間としていること。

・収益性を評価する際、現在価値に置きなおして評価すること。

後者はまだイメージしにくいかもしれませんが、例えば、「明日得られる100万円と10年後に得られる100万円なら、明日得られる100万円の方が価値が 大きいよね」という発想です。(明日得られる100万円は、10年後には運用によって100万円以上 になることが期待されますし、10年後に本当に期待通りに10万円を貰えるのか不確実性が相対的に高いからです)




では、これら3つの方法について、順番に詳しく見ていきましょう。

(1)直接還元法(表面利回り)

特定期間(通常は1年間単位)における収益(満室想定家賃)から評価する、最もシンプルな計算方法です。

 現在価値(購入価格)=収益(家賃×12ヶ月)÷希望利回り

 表面利回り =収益(家 賃×12ヶ月)÷現在価値(購入価格)


たとえば、月額家賃5万円の部屋を、表面利回り10%で運用する場合、購入価格は600万円です。

 600万円 =5万円×12ヶ月 ÷10%

また、月額家賃5万円の部屋が600万円で売りに出ていれば、表面利回りは10%となります。

 10% =5万円×12ヶ月 ÷600万円


不動産取引の実務上での「利回り」は、とくに注釈がなければ、通常はこの表面利回りです。


(2)直接還元法(実質利回り)

前述のとおり、区分マンションでは、建物管理費と修繕積立金は毎月固定で強制的に支出しますので、月額家賃が満額収益になることはありません。

そのため、区分ワンルーム投資の実務では、直接還元法を使う場合であっても、この実質利回りベースで評価することが一般的です。

 現在価値(購入価格)=純収益(家賃-建物管理費-修繕積立金)×12ヶ月 ÷希望利回り

 実質利回り =純収益 (家賃-建物管理費-修繕積立金)×12ヶ月 ÷現在価値(購入価格)

たとえば、月額家賃5万円、建物管理費と修繕積立金の合計1万円の部屋を、表面利回り10%で運用する場合、購入価格は600万円です。

 480万円 =(5万円-1万円)×12ヶ月 ÷10%

また、月額家賃5万円、建物管理費と修繕積立金の合計1万円の部屋が480万円で売りに出ていれば、実質利回りは10%となります。

 10% =(5万円-1万円)×12ヶ月 ÷480万円

区分マンションの建物管理費と修繕積立金は、高くなることはあっても安くなることはまずありません。(稀に建物管理会社のコンペ・変更により、安くなるケー スもありますが、手続き上のハードルが高くレアケースです)

そのため、直接還元法で評価するのであれば、少なくとも実質利回りを用いるべきで しょう。


なお、区分ワンルーム投資をするうえでは、毎月発生するお金は他にもあります。

例えば、固定資産税・都市計画税は毎年必ず支払いがありますし、火災保険も殆どのケースで加入するはずです。

本来は、こうした諸費用も実質利回りに入れて評価すべきですが、少なくとも東京近郊の区分ワンルーム投資においては、商慣習として考慮しないことが多いよう なのでご注意ください。




(3)DCF法

直接還元法は、物件保有期間中の特定期間(1年間)だけを切り取り、その期間内の収益性を評価しますが、実際には2年以上に渡って保有することも多いでしょ うし、1年以内で売却する場合であっても売却による売却益(売却損)が発生します。

また、前述のとおり、投資初年度の収益と投資10年目の収益では、たとえ同額であっても複利効果や確実性の分、その価値は変わってきます。

DCF法は、こうした観点から現在価値を割り出す計算方法です。


とはいえ、DCF法を詳しく説明すると、本が一冊できるボリュームになりますし、不動産投資の実務において、DCF法の肝である「現在価値に割り戻す」とこ ろまでキッチリ計算している人を見たことがありません(苦笑)

これは、DCF法を理解・実践する難易度が高いことに加えて、仮定に仮定を重ねるDCF法の計算結果が実務にはあまり役に立たないと考える方が多いためだと 推察します。

正直なところ、私自身も、FP1級取得時に、学問としてDCF法を学びましたが、完璧に理解できているかと問われれば不安もあります。


そこで、このサイトでは、「現在価値への割り戻し」という観点を排除し、「物件を保有する全期間をおよび売却時を対象範囲とする」部分のみを拝借した 「お手軽DCF法」ともいうべき考え方でのシミュレーションをお勧めしています。

シミュレーション方法詳細の説明は膨大なボリュームになるため、後章でじっくりご説明します。

お急ぎの方や詳しく知りたい方は、手前味噌ですが、私の著書『不動産投資の収益計算本格入門』をご参照ください。(このサイトに掲載予定の内 容よりも詳しく、シミュレーション雛形も無料特典で付いてきますので)


ここまで、買い手側から見た物件の価値に着目して、積算法と収益還元法をご説明してきした。

次のページでは、少し見方を変えて、売り手側から見た物件の価値について、ご説明していきます。


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