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2-6.  区分ワンルーム物件の売買価値(売値)はどう決まる!?

これまでに、区分ワンルーム物件の価値を測る方法として、「積算法」「収益還元法」をご説明してきました。

この2つは、金融機関の融資判断の基礎であったり、購入時の期待利回りを求める指標だったりと、いわば買い手側の視点に立った価値の尺度です。

では、実際の区分ワンルーム投資市場において、これらの逆算で売値が決まっているかといえば、必ずしもそうではありません。(特に、売り手が個人の場合)

このページでは、区分ワンルーム売買の実務において、どのように区分ワンルーム物件の売買価値(売値)が設定されているのかをご説明していきます。


(1)売主が個人の場合

売却事情にもよりますが、売主が仲介不動産業者に査定を依頼し、査定価格のレンジ内で売値を決めるケースが一般的です。

査定する仲介不動産業者としては、不動産が売却できないとタダ働きとなってしまうため、成約見込みのある金額を提案したいところですが、売主希望額との乖離 が大 きいと、売主が売却意欲を無くしてしまったり、他の仲介不動産会社に乗り換えられてしまうリスクがあります。

そのため、近隣や類似地域の実際の成約事例をベースとしつつ、最終的には売主と仲介不動産業者の駆け 引きによって、売値は決まると覚えておきましょう。

そして、その一応のベースとなる、近隣や類似地域の実際の成約事例による物件価値の算出方法を、取引 事例比較法といいます。


取引事例比較法は、近隣や類似地域の実際の売買事例だけでなく、その物件の個別事情を補正して物件価値を測ります。

本来は、評価者のスキル・経験によって精度が分かれる評価方法のはずですが、区分ワンルーム投資における実務では、ごくシンプルに、同一または近隣マンショ ンの類 似ワンルームを対象に、過去数年の成約実績(売却価格)を集計し、そのレンジ内を相場価格とするだけの査定が多いようです。

加えて、不動産業者はレインズという業界システム(日本国内の不動産取引データベースのようなものです)を通じて、過去の成約事例は容易に確認できますの で、結果的にどこの不動産業者に依頼を出しても、似たよう な査定結果となります。


ところが、実際の売値を見ると、同一エリア内の類似条件の区分ワンルームであっても売値が全く異なることがよくあります。

これが売主と仲介不動産業者の間での駆 け引きの結果です。

仲介不動産業者としては、タダ働きを防ぐため、取引事例比較法による相場レンジの中央値~下限値を売値として確実に売却成功させたい一方、多くの売主は相場 レンジの上限値あるいは相場レンジ以上の価格を売値に希望します。

利益相反の関係になってしまうため、落としどころを探るべく、日夜さまざまな駆け引きが行われているんですね。


以下に、駆け引きの一例をご紹介しましょう。

■確実に契約を取ることを優先し、まずは売主の言い値で専任媒介契約を締結する

→専任媒介契約を締結すると、契約期間中(一般に3ヵ月間)は他の業者に売却依頼できません


■当面は、自社顧客へのメール配信や自社ホームページ掲載等、最小限の営業活動をする

→売主は「売値が強気過ぎた」と次第に焦り出します。ちなみに、「必死に販売しているのに売れない」感を演出して売主の信頼を得るためのハウツーが情報交換 されていたりします(苦笑)


■満を持して、「それらしい」理由を添えて売主に売値引き下げを打診する

→売主の様子を見ながら、場合によっては複数回に分けて値下げを行い、「売れそうな売値」まで下がった時点で、しっかり販売活動をする


悪質なケースでは、初期段階で、ラッキーパンチ的に他の不動産業者から問い合わせがきても、売主を焦らせるため、そして自社での売却を確実に行うため、「商 談中です」「売却済です」と追い返し、売主へ問い合わせがあったことを伏せるケースもあります。(いわゆる「囲い込み」という手法で業法違反なのです が・・・)

区分ワンルーム投資の初心者の方が、「不動産の価格相場が分からない」と感じる原因の一つは、こうした二重価格・三重価格のような売り方にあると感じています。



(2)売主が不動産業者(買取再販業者)の場合

区分ワンルーム投資では、個人が売却する物件のほか、買取再販業者の販売する物件を購入するケースも多くあります。

都内区分ワンルーム投資でいえば、買取再販業者の最大手は日本財託という会社で、聞いたことのある方も多いかと思いますが、このケースでの売値設定は個人の それ とは全く異なります。


買取再販業者は、インターネットでの販売物件ではなく、インターネットに掲載する前の割安な販売情報を保有しており、基本的には独自ルートで物件を割安に仕 入れていま す。

複数の買取再販業者に聞いたところ、この仕入れ値は、取引事例比較法による相場レンジ比で、「激安~少し安い」までかなりの幅があるそうです。(纏まった数 を仕入れるため、激安物件だけを仕入れるわけにはいかないそうです)

そしてここからが面白い部分で、買取再販業者の物件の売値は、「積算法」「収益還元法」「取引事例比 較法」の3つを組み合わせて決定されているようです。


これは、買取再販業者は、効率的に区分ワンルーム投資家に販売する戦略を取るためで、

■金融機関から融資を受けて購入する投資家が多い

→融資の付きやすい物件(≒積算価値のある物件)でないと売りづらい(提携ローン等で積算価値を補うケースもあります)


■シミュレーションで儲かる物件しか投資家は買わない

→収益還元法で一定以上の利回りがないと売りにくい


という構図からくるものです。


そのため、同一エリア内の類似条件の区分ワンルームであれば、同じ買取再販業者内の販売価格はほぼ同 じ金額になりますので、初めて区分ワンルーム物件を購入する方や、あまり物件探しやその事前勉強に時間をかけられない方は、買取再販 業者から購入するのが分かりやすくて安全かもしれません。


但し、買取再販業者の売値については、以下2点に十分注意ください。

・仕入れ値の差分は全体で均一化されるため、「割高」な物件を掴むことがない一方、「割安」な物件も ありません

・買取再販業者により、自社利益の幅や、販売時に想定する収益還元法の利回り水準は様々です。最大手の日本財託を意識した業者が多いようですが、なかには不 当に高い価格で販売している業者もありますので、販売実績の少ない買取再販業者から購入する場合には、 複数社の比較検討がお勧めです。





さて、ここまで区分ワンルーム物件の価値について、いろいろな角度からの見方をご説明してきました。

なかなか全ての尺度で好条件となる物件はありませんが(あってもプロや上級者が速攻で押さえてしまいます)、たとえば、「資値(担保価値)を期待する方」は 積算法を重視したり、「短期間での売却想定のある方」は取引事例比較法を重視するなど、ご自身のスタンスによって優先度をつけて評価すれば、区分ワンルーム物 件を選ぶ指標になるはずです。

また、後章でご説明する収益計算シミュレーションについても、こうした知識があれば一段深くご理解いただけると思います。


次のページからは少し趣向を変え、区分ワンルーム投資の種類について、ご説明していきたいと思います。

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